【第1回受賞】優秀な医師になるコツ3つ

東京医科大学 医学教育講座教授 泉 美貴

優秀な医師になるコツを3つ提言します.1)良い師匠に就くこと,2)最初の4,5年間は死に物狂いで仕事をすること,そして3)良い伴侶を得ることです.

本邦には初期研修医を終了すると,系統だった卒後臨床教育のシステムはありません.医局での生活はいわば「丁稚奉公」であり,技術や知識の習得の多くは,「見て倣え」です.システムがない環境下で生じる力量の差は,とりもなおさず就いた師匠の力量の差に直結します.だからこそ,レベルが高く教育的な医師に師事しなければなりません.

医師の能力は,「泉の法則」(図1)に示すように伸びると推測されます.グラフが急峻に立ち上がる卒業後の数年間は,いかなる言い訳も排除して仕事をすべきです.「丁稚」は,「叱られながら学ぶ」しかありません.この時期を逃した医師は叱られることがありませんから,伸びることも難しくなります.医師としての実力は,教育システムが不備の状況下にあっては,本来は医師がすべきか疑問が残る雑用も含めて山ほどの仕事をこなしていくうちに伸びるしかありません.従って,雑用を避けて実力をつけるということは不可能ですし,指導者は雑用を嫌がる丁稚にはチャンスの手を差し伸べ難いものです.

女性医師における「良い伴侶」とは,自分の仕事における成功と,伴侶のそれとが等価であることを理解できる頭の良さではないでしょうか.結婚を焦る必要はありません.もし状況が許されるのであれば,結婚や出産は,医師として一人前になってからをお勧めします.医師としての経験,裁量権,経済的安定,精神的成長などは,年を取ればとるほど増すのですから.

「丁稚奉公」の間は,辛いことが多いかもしれません.しかしその後に待っている医師としての本当の楽しさを享受すべくご精進下さい.きっと医師になって良かったと人生に満足されることでしょう.



図1 泉の法則 医師としての実力は,医学部を卒業後の4,5年間で飛躍的に伸びて,一人前とみなされる水準(*)に達します(赤色実線).この時期を逃し,実力を付けることは極めて困難です(緑色点線).

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