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小児科専門医の相談室⑭          「百日咳」


今年の百日咳は、国立健康危機管理研究機構は全国の医療機関から報告された累計患者数は、8月31日までに速報値で7万2448人になったと明らかにしました。

現在の集計法となった2018年以降、7万人を超えたのは初めてのことです。昨年は4700人で15倍以上の感染者数になっています。


ワクチン接種前の生後2か月までの乳児の死亡例も報告され、大きなニュースとなりました。ちなみに百日咳は100日以上も咳が続くということで名づけられ、江戸時代の医学書『叢桂亭医事小言』(1864年成立)にも「百日咳」の記述があり、「発スレバ凡ソ百日ヲ歴ト云フ」との記述があります。


原因菌は百日咳菌で、くしゃみや咳による飛沫感染で発症し潜伏期は7日~10日と言われています。主な症状は初期、痙咳期、回復期の3期に分けられていますが、特徴的な激しい咳が特徴です。



予防はワクチン接種が重要になります。

2か月からの5種混合を遅れることなく接種することが大切です。

また、他の感染症と同じようにマスク着用や手洗い・うがい、そして早期受診も有効です。


百日咳は「子どもの病気」と思われがちですが、現在は全年齢層に広がっています。

特に乳児は重症化しやすいため、周囲の大人の予防がとても重要です。気になる症状があれば、早めの受診をおすすめします。


治療は百日咳に有効な抗菌薬の内服になりますが、最近はマクロライド系抗菌薬の耐性菌も多くなかなか治らない時は再度かかりつけ医に相談されることが望ましいです。


さて、ワクチン接種ですが、現在2か月からの定期接種となっている5種混合ワクチンと追加接種はもちろんですが、日本小児科学会では年長さんの時期にも3種混合ワクチンの接種を推奨しています。




また、2か月までの乳児への罹患予防に妊婦さんへの3種混合が進められています。妊婦への百日咳ワクチン接種は、妊娠24週〜36週の間に行うのが推奨されています。特に28週〜36週の間が最も効果的とされています。

ただ、残念なことに現在3種混合ワクチンは品薄で入手困難となっています。ワクチン不足にならないよう希望します。


百日咳の流行はまだまだ続くと言われています。

2か月からのワクチンを遅れることなく接種しましょう。


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2025/9/18

  日本女医会 小児救急・子育て支援委員会

               藤谷宏子

 
 
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