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【第4回受賞】Women's Healthの向上のために

久留米大学医学部医学科2年 野中沙織

健康とは「身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない(WHO憲章)」と定義される。 本稿では女性の心身及び社会的健康(Women’s Health)及びその支え方を考察する。  私の考える健康とは、完璧でなくても個々人が日常生活を送り、自らの定める目標を達成しようと努力できる状態である。例えば障害があり、健常者からは日常生活に支障があるように見えても、自身がその状態を受容し、前向きに目標に向かっていればそれは健康だと考える。また、Women’s Healthの実現とわざわざ言わなくても、男女ともに健康を保てる社会こそが、日本の目指すべき社会像だと考える。 このような考え方のもと、国民の健康を維持・向上させる為に以下の3点を提案したい。

1)医学部におけるWomen’s Healthに関する教育の充実 現在、国内の多くの医学部では、産科・婦人科の一部として、Women’s Healthの講義が行われているが、その内容は十分とは言いがたい。これに加え、日本では、子宮頸がん検診の受診率を考えてもわかるように、産科・婦人科の受診は敷居が高いと考えられており、女性自身への健康教育の場としては十分に機能しているとは言いがたい。このことから、女性自身が自身の健康を維持・向上していく為には産科・婦人科への受診勧奨だけでなく、内科等の日常的な受診の機会に患者に対するWomen’s Healthに関する知識の提供が必要だと考えられる。そのためには、すべての診療科の医師がWomen’s Healthに対するより実践的な知識を身につけることが必要であり、学部教育において、現在の教育で不足している避妊教育、性感染症、更年期障害等に関して、問診技術等も含めて受講することが必要である。

2)学校教育における健康教育の充実 現在の学校教育において、生徒・児童が自らの身体・健康に関して学ぶ機会はほぼ保健の授業のみであり、その内容は応急処置の初歩や社会における生活習慣病の概論、男女の性機能の違い等にとどまり、実際に生活していく中で生かしていくには物足りないものとなっている。そこで私は、従来の保健という科目とは別に、「健康」という科目を設置し、ワークショップや医療従事者による話などを通じて男女の別なく、人としてより健康に充実した人生について考えることを提案したい。この中には現代の日本人女性がしばしば直面する結婚・出産・育児・介護等のライフイベントに関するディスカッションを含め、本当の意味で男女が活躍できる社会の下地作りを目指す。

3)医療界における男女共同参画の実現 上記で広く社会におけるWomen’s Healthの支え方について述べてきた。しかし、教育の成果が効果を示すには長い年月がかかる。そこでまず、国民のWomen’s Healthの支え手となる医療界がWomen’s Health、ひいてはHuman Healthの実現に向け、必要な人が必要なタイミングで働き方を変え、自分の大切な人を支えることができるシステムを導入し、ワーク・ライフ共に真の男女共同参画社会を実現することが必須であると考える。

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