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【第1回受賞】医学教育に女性医師の登用を

冨保紗希

近年、医学界でも「男女共同参画」という言葉がよく使われるようになりました。男女共同参画とは、英語のGender Equalityを訳した行政用語です。この言葉はイメージが曖昧であり目的が見えにくくなるため、本稿ではジェンダー平等という言葉を使用したいと思います。

近年医学部における女子学生の占める割合は年々増加している。臨床の場に出た女性医師の直面する問題として育休や介護休による収入減と第一線の医療から取り残され、技術的な面で現場に復帰し得なくなるキャリア喪失の恐れがある。現在の医療界の直面している過重勤務や医師不足などの問題を考慮すると女性医師の増加は今後深刻な問題となっていくことが予想される。

女性特有の重要な資質として、出産という肉体的構造や母性に代表される精神的反応があり、「人を守り育てたい」という想いが挙げられる。この資質を生かして教育の場にあたってもらい、学生に医師としての根源を伝えてもらうことは、医学部教員に女性医師の占める割合が極めて少ない現状をみると、とても良い方法であると思われる。医師の養成において大学は、卒後の初期臨床研修と共に良医を育てる重要な位置を占めている。人体を科学として深く、かつ広く学ぶ一方で医師としての心構え、立ち居振る舞いを習得する場が大学医学部教育であると考える。臨床現場から離れざるを得なくなった女性医師にこれを担ってもらい、一定のキャリアが与えられることは学生にとっても良い効果が期待できるのではないか。女性医師から教育を受けた男性医師は、女性に対して協働者としての理解が進み、閉鎖的な医療界にも男女参画の意識が深まるのではないかと考える。

医師のほとんどが男性だった以前までは、「男なみ」の働き方が当たり前でした。しかし、多くの男性医師が「男なみ」に働けたのは、家事・育児・介護などの無償労働を担う女性のパートナーがいたからです。今の医師の長時間・不規則な労働環境は、いわば「家事・育児を担う妻をパートナーに持つ男性医師」を基準に作られてきたといえます。

私の提言は、各地に在住する育休や介護休中の女性医師を大学医学部に登録してもらい、一定の単位を担ってもらう。育児や介護の負担は大学の保育施設や介護ヘルパーを利用できるようにして、正当な報酬のもとで子育てや介護との両立を図ってもらうのである。そのためには国費の投入などによる財源の裏づけも必要である。医学教育を担ったことが、国・学会によって承認され重要なキャリアとなれば、パートナの協力も得やすく、現場に復帰しやすくなると確信する。

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