top of page

【第5回受賞】女性であり医師であるということを考える

名古屋市立大学 医学部5年 冨山奈美

女性医師、医学生に「あなたはなぜ医学部に入ったのか」と疑問を投げかけてみる。多くの女性は、人の命を救いたいから、困っている人を助けたいから、といった純粋な動機があったに違いない。毎日忙しく仕事と家庭の両立がしたいから、と答える人がどれだけいるだろうか。しかし現状、周囲の女子学生の意見を聞いていても、女性は医師としての勤務を制限する必要性を感じたり、ライフワークバランス(LWB)に関する悩みを抱えたりしている人が多いように感じる。そして、女性だからという理由で自らキャリアアップを諦めてしまっている現状がみられる。しかし、そもそも仕事か家庭かという二者択一が極端なのである。最近は共働きの家庭も増え、医学部生に占める女性の割合は年々増加しているし、医師偏在によって女性医師も貴重な働き手であることは間違いない。そして、給与体系に男女差がないことをみても、女性医師は躊躇せずに働く権利があると考えてよいのではないか。女性医師自身の意識改革が進まず前述のように保守的な考えでは環境は変わっていかないと私は考える。女性医師自身の意識改革のために以下の2つの提言をしたい。

まず1つ目は、各個人が固定観念に捕われず、自身の医師としての目標やキャリアプラン(CP)を早くから考えておくことである。日本において女性の社会的地位は低く、そのことは皆先入観として持っている。時間のある学生のうちに、そのような問題に考えを巡らせる機会が少ないことと、情報量が少なく対策も分からないためいざ働き始めると問題にぶつかり泣き寝入りする人が多いように思う。家事だけではない。育児や介護についても考えてみてほしい。自分の親や子を世話するのは家族として義務であり、仕事を言い訳に簡単に他人に押し付けてよいものではないと私は考える。早くから自らのCPについて考える機会を得るためには学生のうちに講義などで考えるきっかけ作りができると良いのではないか。もちろん、自ら先輩医師の話を聞く積極的な姿勢も大切であることは言うまでもない。

2つ目は、発言できる環境を整えることである。女性医師は少なからず皆、仕事、家庭、またはその両立に悩んでいることと思う。意見交換や発信の場を作ることで、様々な立場の医師からの助言を貰うことができて有意義であると感じる。各大学主導でそのような会があれば、気軽に参加できるだろうし、意見を反映させて現状を打開するきっかけにもなりやすいのではないか。また、参加しやすく人数が増えていけば啓発活動としても十分であるし、信頼できるメンターを見つける場ともなり得るのではないだろうか。 個人が女性医師のLWBについて思いを巡らせ、そしてそれが周囲に影響を与えられる機会を作るための環境整備が進んでいけば確実に良い方向に向かうと私は考える。仕事か家庭かという二者択一ではなく、柔軟に考えて協力し合える家庭作り、社会作りが進んでいくことを願う。

最新記事

すべて表示

【第7回受賞】それは本当の女性医師だからの問題なのでしょうか?

福井大学医学部附属病院呼吸器内科・医員 門脇 麻衣子 私が医者として仕事を始めた今から20年ほど前は、女性医師への社会の印象はあまりよくなかった。特に田舎では男尊女卑の考えが根強く残っていた。診察室の外から、「男先生(おとこせんせい)でお願いします」と言う患者さんの声が聞こえたりした。  確かに、患者さんにとってその時代は、偉そうにしている先生が偉い先生であり、その偉い先生に叱られて、患者自身の生

【第7回受賞】継続して医療を提供するために

福地眼科 福地 麗 様々なライフイベントを通じて人生の深みを得た医師は、AIが医療の一翼を担うようになっても今後も必要とされると思われる。  ジェンダーフリーの概念が浸透しつつある現在、女性医師と限定することは適切ではないかもしれない。が、日本社会では現在も性別役割分業傾向が欧米諸国と比して強い。  家事・出産・育児を比較的主役として担いがちな女性医師は、仕事との両立に今も悩みながら模索している。

【第6回受賞】イクボスになる!

秋田大学医学部総合地域医療推進学講座 准教授 蓮沼 直子 近年、秋田大学医学部では女子医学生が4割を超えたが、医師全体でも20%超となった。また医師国家試験合格者に占める割合も平成12年から30%を超え、今後10年の間に40代女性指導医の割合は3割を超える。しかし、女性医師は30代に病院を退職し、診療所勤務や非常勤になっていることが分かっている。 今回、一生の仕事として女性が医師を続けるためのキー

bottom of page