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『命の重さは、誰にも変えられない』


――排外主義の拡散に抗して、私たちが今、声をあげる理由


私たち日本女医会の会員は、日々、命の最前線で患者さんと向き合っています。そこには、性別も年齢も、セクシャリティーも、国籍も、人種も、職業も関係ありません。一人ひとりの命と人権は、すべて同じ重さを持つ――これは、医療の現場で常に確認される揺るぎない事実です。


ところが今、選挙の場を利用して「日本人ファースト」や「違法外国人ゼロ」といった排外的な言葉が、ファクトチェックもされぬまま広がっています。「外国人の特権剥奪」や「外国人の犯罪率の高さ」などといった誤った言説が、差別を助長し、社会を分断しています。


私たちは忘れてはなりません。1923年の関東大震災直後に、根拠なき噂と差別感情から、多くの朝鮮人が虐殺されました。ごく普通の市民が、いっときの憎悪の波に飲まれ、残虐な行動に及んだ歴史があります。あれから100年が経った今、私たちは本当に過去から学べているのでしょうか。今夏の選挙をめぐる差別的な発言の数々に触れ、私たちは深い危機感を抱いています。


命の重さに違いはありません。人権の重さもまた、誰にとっても等しいはずです。私たち日本女医会は、排外主義を助長し、人権を軽んじるような言説に対し、強く抗議の声を上げます。民主主義が揺らぎ、命に等級がつけられるような社会へと傾いていくことに、医療の現場にいる者として、深い憂慮を禁じ得ません。


私たちは、命の尊厳を守る者として、いまこそ声を上げ、差別や分断ではなく、尊重と共生の社会を求め続けます。


2025年7月15日

公益社団法人日本女医会

会長 前田佳子

副会長 青木正美



 
 
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