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【第6回受賞】継続するということ

氷川町整形外科・皮ふ科 城所 朋子

私は今年で医師となり25年目。4年前に皮膚科を開業した。同期の中では遅い方である。二人の息子の子育てもひと段落つき、現在は、地方に単身で暮らす要介護5の母のもとに月に数回、飛行機で往復している。入院すれば、平日でないと先生と話もおろか、受診もできないので、月曜日に某大学から代診の先生が来て下さるという好機に助けられ、日&月曜を利用して帰省し、診療を継続している。感謝の気持ちしかない。この機会をお導き下さったのが、今回新しく日本女医会に創設された溝口昌子賞の溝口先生。私は、先生が主任教授で赴任された翌々年に入局した。当時珍しかった女性教授、皮膚科医というより、溝口先生のもとでトレーニングを受けたいと思い、入局を決めた。患者さんにはとても優しかったが、医局員への指導は厳しかった。臨床、研究、論文と先生はいつ寝ているのかと思う仕事量、でも、いつもおおらかで、厳しいお叱りの言葉にも品があるので、すっと身体の中に入ってくる。「先生、時間は作るものよ」と言われてからは、時間がないからできないということは、私の中にはなしになった。溝口先生は、第十一回国際女性技術者、科学者会議に「女性医師の立場から」と、医学を志す若き女性へのメッセージを述べられている。医学部が約半数女性となった現状、出産、育休、子育て中の勤務形態の変更は、避けて通れない社会問題である。親の介護も同じであるが、育休、子育て中の先生世代は、体力はあるはず。意欲と環境があれば、一過性に細くなっても、診療は継続していくことはできると思う。専門医取得後、出産した私に溝口先生は当直がない大学近隣病院の医長の席を用意してくださったが、家族の協力と理解が得られなかった。パートで産後8週から週に2~3回勤務することにした。「パートだけでは、手が荒れるわよ、先生」と言われたが、その意味が分かるのは、随分時間が経ってからである。子育てとパート勤務に必至、誰にも頼らず、乗り切ってみせるとやってはいたが、大学勤務していれば、自然に入ってくる新しい知識も当然なく、子供が病気をすると預け先がなくなり、休みが増えて、、、と八方塞がりになっていた時期がある。溝口先生が大学退官後に勤務された病院で、診療助手を願い出たところ、先生が病院に掛け合って下さり、2年間先生の診療を研修医の頃のように勉強することができた。ここで、自分の手が荒れていたことに気付いた。私のように、家族に協力が得られない環境で出産し、産休が明けても、大学にフルカムバックまではできない、そんな時期を、医師として手が荒れないように、診療を続けてもらえるシステムが自分のクリニックでできないだろうかと考えているが、何の肩書きも持たない一個人では難しい。優秀な人材が挫折しないように、雇用側もフレキシブルな発想が必要。私も継続するための誰かの力になり、溝口先生の教えもつないでいきたいと思っている。

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