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【第2回受賞】医学界のジェンダー平等を考える

ベイラー医科大学(Baylor College of Medicine) 感染症科フェロー 安川康介

近年、医学界でも「男女共同参画」という言葉がよく使われるようになりました。男女共同参画とは、英語のGender Equalityを訳した行政用語です。この言葉はイメージが曖昧であり目的が見えにくくなるため、本稿ではジェンダー平等という言葉を使用したいと思います。

日本の経済や政治参加における男女格差は世界的にみても大きく、こうした状況は医学界にも当てはまります。私の調査では、全国の医学部の全教授のうち女性は約2.6%と少なく、約3分の1の医学部には女性教授が一人もいませんでした。また、日本外科学会の調査では、学会の評議員に占める女性の割合は6%と低く、半数以上の学会で女性役員が一人もいないことが報告されています。医師の世代別男女比を考慮に入れても、指導的な立場にいる女性は極端に少なく、今の医学界は女性が医師として非常に活躍しにくい状況があります。

医学界における男女不平等の最大の原因は、「女でも『男なみ』に働けたら男女平等」というルールがあることです。「男なみ」に働くとは、結婚や育児などを理由に職場を長期間離れない、連日深夜まで、時には当直が続いても頑張って働く、患者さんの状態が悪化したら家庭の事情がどうであれすぐに駆けつける、といった今の医師に求められている長時間かつ不規則な労働のことを指します。

医師のほとんどが男性だった以前までは、「男なみ」の働き方が当たり前でした。しかし、多くの男性医師が「男なみ」に働けたのは、家事・育児・介護などの無償労働を担う女性のパートナーがいたからです。今の医師の長時間・不規則な労働環境は、いわば「家事・育児を担う妻をパートナーに持つ男性医師」を基準に作られてきたといえます。

「男なみ」を求められる女性医師と、男性医師が異なる点は、パートナーである男性(7割が医師)が家事・育児を担わないために、女性医師自身が「仕事と家庭」の二重負担を抱える状況が生まれていることです。私達の調査では、家事・育児・介護などの無償労働時間を考慮すると、女性医師は男性医師よりも長く働いているという結果がありました。二重負担から医師としての仕事を減らす女性に対し、「男なみ」に働いていないと批判する人がいますが、男性医師が「女なみ」に働いてない、という表現の方が正確かもしれないのです。

現在、「男女共同参画」の議論の場では、女性医師の両立支援として、院内保育所の設置や、ベビーシッター利用補助といった育児期のサポート、そして、ワークシェアリングや短時間正規雇用などによる勤務体制の柔軟化が検討されています。しかし、このような対策により、女性医師が家事を減らして「男なみ」に近い働き方を続けられるようにすることや、「家庭も仕事もなんとか継続」できるようにすることが、目指すべき「両立」ではあってはなりません。

医学界のジェンダー平等を議論していく上で重要なことは、女性の無償労働の上で成り立つ「男なみ」の働き方を前提とする医師の労働環境、そして医学界の「平等」を見直すことだと考えます。

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