東京慈恵会医科大学教育センター/総合診療部 助教 岡崎史子
医師になって20年。研修医時代は男性医師に負けないよう、その後は自分自身に負けないように必死に仕事してきた。頑張れば報われる。正当に評価されてよりよい人生が開ける、そう信じてひた走ってきた気がする。それは一面では真実だったが、実は自分は単に運がよかっただけかもしれない。理解ある夫を得て、子供はぐれることなく育ち、上司は惜しみなく私のキャリアをサポートしてくれた。その間、妊娠、出産を機に職場を離れざるをえない優秀な女性医師もたくさんいた。もちろんその後それぞれに幸せな道を歩いているが、キャリアが運に左右されてよいはずはない。それには以下の2点が重要である。
1.キャリア形成教育
女性医師はまず、そう簡単にキャリアを諦めてはいけない。それには、医学生のうちからのキャリア形成教育が不可欠だと考える。出産、子育てしながら復帰するその間、男性と全く同じ仕事を継続するのは当然不可能だが、「以前と同じように仕事できないから」といって辞めていく医師がいる。ワークライフバランス(WLB)をうまく取りながら、細く長く仕事をして徐々に花開く醍醐味があるということを彼女たちは知らない。実感がなくとも、長く仕事を続けることの喜びがあると早くから教育する必要がある。当院では60歳代OGとのお茶会を開いたり、また医学生にWLBの授業を行っている。人生いろいろあるが、続けていれば少しずつ望むキャリアは形成されると是非知ってほしい。
2.男女共同参画社会へ
北欧では女性の管理職の割合を一定以上にしなければならないという法律がある。男性社会である医学会を男女共同参画社会にするには、はじめはこのようなトップダウンの政策が必須である。それは女性に社会を開くとともに、男性に家庭を開くことになる。最近の若い男性医師は子育てに参画したい希望を持っている。女性医師が輝く社会は男性医師も同時に輝く社会となる。是非そのような未来が開けてほしいと切に願っている。
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