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小児科専門医の相談室③         花粉-食物アレルギー症候群 

スギ以外の花粉が起こす食物アレルギー


 今までは食べられたモモやリンゴなどの果物を食べて口の中がピリピリしたり、のどや耳の中が痒くなったりする子ども達が増えています。


 この症状は、ハンノキ花粉抗原と似た構造の食物抗原である果物(主にバラ科の果物であるモモやリンゴなど)を食べたことによる花粉-食物アレルギー症候群によるものです。

 スギ以外の花粉にアレルギーがあることを知ることは少なく、年長になり果物アレルギーを発症した場合はスギ以外の花粉と関連がある場合が多いとされています。近年、子どもたちの食物アレルギーを引き起こす原因食物の傾向が大きく変わりました。社会全体の食生活の変化により、回転寿司で人気のイクラ、輸入量が増え多種の食品に含まれるようになったナッツなどによる発症の低年齢化がみられ、魚卵やナッツ類のアレルギーが増えてきました。花粉による果物アレルギーは中学生以降に発症する例が多いとされていましたが、最近は小学校低学年でも頻繁にみられるようになりました。


 スギ花粉と関連のある果物での発症は少なく、ハンノキなどの花粉症でリンゴやモモ、ナシなどの果物アレルギーが起きることが分かっています。また、豆乳や生モヤシで発症する特殊な場合もあり注意が必要です。ハンノキは本州の多くに生息し、北海道ではシラカンバによる花粉が関連しているとされています。


花粉によって誘発される果物が異なる


 ブタクサやカモガヤなどの花粉症の場合はウリ科などの果物で発症しやすいなどと花粉によって誘発される果物が異なっています。したがって、症状を起こした果物がわかれば、関連する花粉症も推測できるということになります。

 日本学校保健会が全国の公立小中高校と特別支援学校、義務教育学校、中等教育学校を対象に2022年に行った調査結果では食物アレルギーのある児童生徒が約52万7千人おり、2013年の前回調査より約12万人増加したことを報告しました。原因食物としては鶏卵25.8%に次いで果物類25.0%でした。


 このような原因食物として果物類の増加は、花粉-食物アレルギー症候群によるもので、花粉症の子どもの増加が食物アレルギーの子どもの増加にも関連していることが指摘されています。


生の果物を食べて違和感を起こしたときは小児科や耳鼻科などに相談を


 花粉による果物アレルギーの多くは生の果物を食べた時に口腔の違和感などの軽微な症状で発症するとされ、加熱した果物では症状を起こしにくいとされています。しかしながら、重篤なアナフィラキシーを起こすこともあることから、生の果物を食べて違和感などを起こすようなら小児科や耳鼻科などの先生と相談するとよいでしょう。


        2023/9/15

                              文責:日本女医会 小児救急委員会

                                大谷智子




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