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更年期障害の治療薬「メノエイドコンビパッチ」

作成者:東京女子医科大学成人医学センター 婦人科 東舘 紀子


1.女性と加齢

加齢は男女に共通する現象であるが、女性には男性と異なり「閉経」が起こり、以後加齢現象が促進することが知られている。閉経前後の心身の不調は「更年期障害」と呼ばれ、その病態は「エストロゲン」の急激な減少を主因とし、そのほか社会環境因子や個人の心理などが複雑に絡み合って、引き起こされる。更年期以降の女性の「エストロゲン」低下とその欠落症状は、時間とともに変化が見られる(図1)。


図1エストロゲンの欠乏症状(日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会)



2.更年期障害の診断

更年期障害はさまざまな自覚症状があり、鑑別診断として、心疾患、甲状腺疾患、精神神経疾患等が挙げられるため、心機能検査、血液検査や心理テストなどが必要となる。更年期には、エストロゲン低値、FSH高値となるが、これらの数値からだけで更年期障害を診断することは難しいので、問診を中心に他科疾患の除外などを総合的に判断する。除外診断は時間がかかることもあり、本人の同意があれば、短期的にホルモン補充療法(HRT)を試みて治療的診断を行うこともある。

ホルモン補充療法(HRT)

低下したエストロゲンを補充する原因療法で、エストロゲン単独補充では、子宮内膜が増殖して子宮内膜癌(子宮体癌)のリスクが高くなるため、黄体ホルモンの併用が必要である。エストロゲンは更年期障害の治療になるだけでなく、抗動脈硬化作用、骨密度増加作用、脳に対する保護作用などさまざまなメリットがあるが、長期の使用は副作用があることが知られるようになった。5年以上継続すると乳癌が有意に増加する(相対リスク1.3~1.4)ことが2002年WHI報告によって発表された。また、血栓症や塞栓症も増加するとされ、高齢者にはリスクとなりうるが、50歳代の女性への投与には問題がないとされている。  WHIでの薬剤は、結合型エストロゲン(CEE)+MPA(酢酸メドロキシプロゲステロン)という経口薬であった。その後様々な研究がなされ、エストロゲンの投与経路により、副作用や効果に差が見られることが判明した。より副作用が少なくエストロゲンの効果が得られる方法として、「経皮」エストロゲン製剤が発売されている。

経口と経皮エストロゲン製剤の違い

経口エストロゲンでは、腸管から吸収され、肝臓に取り込まれるため、肝臓内のエストロゲン濃度が急上昇し、脂質代謝の変化や凝固因子産生を引き起こす。経皮では、皮膚から吸収され直接血中に移行するため、このような初回肝通過効果がみられない。<経口エストロゲン>経口エストロゲン製剤(CEE)はLDLコレステロール低下、Lp(a)低下、HDLコレステロール上昇、レムナント低下など脂質代謝改善作用を有するが、TG上昇作用があり、ほかにも血管炎症に促進的に作用することや血液凝固因子が上昇することが知られている。<経皮エストロゲン>経皮17βエストラジオール製剤では、脂質代謝や血液凝固系への影響は少なく、血管炎症には抑制的に作用する。また、血中濃度がほぼ一定であることもメリットである。しかし、皮膚からの吸収という薬剤形態から、貼付部位への皮膚刺激作用、剥がれやすいなどのデメリットがある。

メノエイドコンビパッチ(経皮吸収卵胞・黄体ホルモン製剤)

直径34mm白色透明の円形経皮吸収型製剤で、成分はエストラジオール0.62mg+酢酸ノルエチステロン2.70mgであり、用法は、1枚を週2回(3~4日ごと)下腹部に貼付するものである。効能・効果は「更年期障害及び卵巣欠落症状に伴う血管運動神経系症状(Hot flash及び発汗)」である。合剤であり、更年期女性一般に使用可能であるが、子宮摘出者は、黄体ホルモンは不要であるので、卵胞ホルモンのみの製剤を使用する。

 

主要文献

  • ホルモン補充療法ガイドライン;日本産科婦人科学会・日本更年期学会編、杏林舎、2009年

  • Writing Group for the Women's Health Initiative Investigators. Risks and benefits of ertrogen plus progestin in healthy postmenopausal women: Principal results from the Women'Health Initiative Randomized Controlled Trial. JAMA2002 ;288:321-333

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