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アトピー性皮膚炎治療の新しい治療法


外用ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤:デルゴシチニブ(コレクチム)軟膏のアトピー性皮膚炎寛解導入療法について


作成者:日本女医会理事・

和洋女子大学大学院客員教授・

前東京女子医科大学附属足立医療センター小児科准教授

大谷 智子


はじめに

 アトピー性皮膚炎は、増悪と軽快を繰り返す掻痒を主病変とする疾患で、遷延化や悪化にはitch-scratch cycleが大きく関与している。病態であるTh2型免疫反応ついて解明されてきており、多くの新薬が開発され使用されるようになった。その中でも1999年に発売されたタクロリムス(プロトピック)軟膏以来の新薬となるのがデルゴシチニブ(コレクチム)軟膏である。アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021において治療のアルゴリズムにおける寛解導入療法に示されており、ステロイド外用薬とタクロリムス軟膏のみが使用されていた治療法から選択肢が増えたと考えられる。また、2023年1月より生後6ヵ月からの乳児の適応も拡大され、アトピー性皮膚炎治療の新しい治療法として期待される。

アトピー性皮膚炎の掻痒に関する病態:

 アトピー性皮膚炎の皮膚バリア機能低下は、抗原(アレルゲン)の皮膚への侵入が容易となり、過剰な免疫応答はアレルギー反応を引き起こす。アレルゲンによりTh2細胞等を活性化して2型免疫応答を誘導し、皮膚に浸潤したTh2細胞がIL-31、IL-4を産生する。サイトカインであるIL-31は、末梢神経に発現する機能的IL-31受容体に作用し直接掻痒を誘発する。またIL-4は末梢神経のIL-4受容体を介して起痒因子に対する反応閾値を下げ慢性的な掻痒に関与するとともに好酸球の遊走やIgE産生亢進による肥満細胞の脱顆粒によるヒスタミン暴露においても掻痒に関わるサイトカインである。

ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤の作用機序:

 ヤヌスキナーゼ(JAK)は掻痒等に関与するサイトカインシグナルを伝達し、免疫細胞の活性化を担っているサイトカイン受容体のチロシンキナーゼであり、JAK1、JAK2、JAK3、JAK4の4種類がある。デルゴシチニブは、これら4種類のJAKファミリーの全てのキナーゼ活性を阻害し、サイトカインシグナル伝達を阻害する作用を有するとされている。

 既存のステロイドやタクロリムス製剤とは異なる作用機序を有しており、効果も期待されており外用剤以外にも様々な内服製剤が成人および年長児に使用されている。

デルゴシチニブ(コレクチム)軟膏の使用方法と副作用:

 通常、成人には0.5%製剤を1日2回、小児には0.25%製剤を1日2回患部に塗布し、1回の使用量は最大5gまでとされている。1回の塗布量は体表面積の30%以下とすることや症状に応じて濃度の増減を考慮することが示されている。また、明らかな糜爛局面や粘膜の外用、密閉療法や亜鉛華軟膏を伸ばしてリント布への貼付などは経皮吸収を増加させることから避けるように明記されている。

 副作用としては、免疫抑制作用を有することから、皮膚感染部位には塗布しないことや投与中の毛嚢炎やざ瘡、カポジ水痘様発疹賞などの皮膚感染症に注意することが記載されているが、52週間反復塗布した長期の安全性も確認されている。寛解導入慮法や維持期におけるステロイド使用の減量に代わる治療薬として期待され、タクロリムス軟膏の副作用である皮膚刺激感も生じることはないとされている。

 

参考文献

  • アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021:日本皮膚科学会誌 131巻 2691-2777,2021.

  • デルゴシチブ軟膏安全使用マニュアル:日本皮膚科学会誌 130巻 2581-1588,2020.


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