国産第一号抗体薬「アクテムラ」

作成者:元東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センター教授 原 まさ子


はじめに

アクテムラは「ヒト化抗ヒトインターロイキン6(IL-6)レセプターモノクロナール抗体(anti-interleukin-6 receptor antibody)」で、一般名トシリズマブ(tocilizumab)という遺伝子組み換え製剤である。IL-6のレセプターへの結合を競合的に阻害して、抗炎症効果や抗体産生抑制効果を示す。大阪大学を中心に開発された国産第一号の抗体薬である。


1.適応症

IL-6は活性化B細胞に抗体産生を誘導する因子として単離されたが、免疫、造血、神経系細胞の増殖、分化を制御する。関節リウマチにおいては、IL-6が関節滑膜細胞や浸潤するマクロファージから過剰に産生され、自己免疫反応を増強するとともに、関節局所の炎症を惹起している。また、発熱、倦怠感、炎症性の貧血、血小板の増加、リウマトイド因子の産生、CRPやフィブリノーゲンなどの急性期蛋白の産生を引き起こしている。さらに、IL-6は破骨細胞の活性化や細胞外マトリックス分解酵素の産生を誘導して関節破壊にもかかわっている。アクテムラは膜型IL-6レセプターと可溶性IL-6レセプター両者のIL-6結合部位を認識して、競合的にIL-6の結合を阻害して臨床効果を表している。2005年4月にIL-6を過剰に産生するリンパ増殖性疾患であるキャッスルマン病に対し、希少疾患治療薬として承認された。2008年4月には関節リウマチ、若年性特発性関節炎、全身型若年性特発性関節炎に保険適応が認められている。海外では2009年 1月にヨーロッパ、2010 年1月にはアメリカで承認を取得し、使用されている。その他、全身性エリテマトーデス、クローン病、シェーグレン症候群、強直性脊椎炎、多発性骨髄腫などに対してもその有効性が期待されている。


2.臨床効果

キャッスルマン病においては、発熱などの全身症状やリンパ節腫脹の改善、検査所見(CRP高値、フィブリノーゲン高値、赤沈亢進、貧血、アルブミン低値)の改善が認められる。関節リウマチに対する国内治験成績では、抗リウマチ薬であるメトトレキサートで十分な効果が得られない関節リウマチ患者に6ヶ月間投与して著効65.5%、有効31.1%と96%以上に症状の改善が認められている。第III相試験では罹病期間5年未満の患者で、52週後のレントゲンによる骨破壊の進行抑制も認められている。近年、IL-6やTNFなどの炎症性サイトカインに対する抗サイトカイン療法の開発によって関節リウマチの治療は画期的な進歩を遂げ、早期に診断し、病初期から関節炎を抑え、関節破壊の進行を阻止することで臨床的寛解も可能となった。


3.副作用

過剰診断はその人の生命に影響しない乳がんの発見・診断である。マンモグラフィ検診発見乳がんの10?30%が過剰診断であると考えられている。過剰診断になる理由として、①乳がんの成長がゆっくりとしている、②検診受診者が高齢で乳がんの症状が現れる前に他病死する、③検診技術の進歩により非常に早期の乳がんが発見される、などがある。実際、マンモグラフィ検診発見乳がんには、成長がゆっくりとしたルミナールタイプが多いことが知られている。また、検診技術の進歩により非常に早期な乳がんが発見することが、過剰診断につながる例として非浸潤性乳管がん(DCIS)がある。Low-grade DCISに対する非手術群と手術群の10年生存率は、98.8%、98.6%と両群間に差がない(p=.95)、と報告されている2)。現在大多数のLow-grade DCISに手術が行われている。したがって、Low-grade DCISに対して過剰診断・過剰治療が行われている可能性がある。しかし現状は、生命に影響しない乳がんを適確に診断する方法が確立されていないため、概念としての過剰診断と過剰診断を避ける医療技術との間に大きなギャップがある。


4.用法、用量

関節リウマチでは4週ごとに8mg/kgを1時間かけて点滴静注する。全身性若年性特発性関節炎、キャッスルマン病では8mg/kgを2週間隔で点滴静注し、症状により1週間まで投与間隔を短縮できる。


5.使用時の注意事項

以下の場合にはアクテムラの治療が受けられない。

  • 重症感染症を合併している。

  • 過去にアクテムラの投与をうけて過敏症を起こしたことがある。

  • 妊娠中、授乳中。

また以下の場合には注意を要する。

  • 結核の既往。

  • 結核の発症の報告もあり、投与開始前にはツベルクリン反応や胸部レントゲン、必要に応じて胸部CTなどの検査を行う。潜在的な結核感染症が疑われる場合には抗結核薬の予防投与を行う。

  • 心機能障害がある。

  • 重篤な肝機能障害がある

  • 憩室炎の既往がある。

  • B型慢性肝炎および C型慢性肝炎のキャリアー

  • 白血球数4000/μl以下、およびリンパ球数1000/μl以下

  • 呼吸器合併症を持っている。

  • 高齢者。


 

主要文献

  • Nishimoto N. et al.: Toxicity, pharmacokinetics, and dose-finding study of repetitive treatment with the humanized anti-interleukin 6 receptor antibody MRA in rheumatoid arthritis. Phase I/II clinical study. J Rheumatol 30: 1426-1435 , 2003.

  • Maini RN et al. : Double-blind randomized controlled clinical trial of the interleukin-6 receptor antagonist, tocilizumab, in European patients with rheumatoid arthritis who had an incomplete response to methotrexate. Arthritis Rheum 54 : 2817- 2829, 2006.

  • Nishimoto N. et al.:Study of active controlled monotherapy used for rheumatoid arthritis, an IL-6 inhibitor (SAMURAI): -evidence of clinical and radiographic benefit from an X-ray reader-blind randomized controlled trial of tocilizumab. Ann Rheum Dis. 2007.