【第2回受賞】"ママさん"をやめさせない

弘前大学医学部付属病院皮膚科 皆川 智子

職場の環境が整備されていないために、妊娠・出産・育児を機に、キャリアを積む前に離職する女性医師が多いのが現状です。弘前大皮膚科では子育て中の女性医師は"ママさん"とよばれ、支えてくれる先生方や家族のおかげで、"医師"と"母"を続けている"ママさんたち"がおり、私もその一人です。

地方は今も昔も医師不足です。医師不足で男性医師も疲弊しており、育児中の女性医師に優遇措置を講ずることが難しい現状です。公立病院は当直出来ない女性医師を希望せず、大学病院ではポストが少なく、常勤医師にもなかなかなれません。大学病院で助教の医師が産休に入る場合、他の講師・助教の医師の負担が増えるため、出産前に助教を退職した女性医師も多いと思います。

私も出産を機に退職した一人です。私は妊娠22週で早産マーカーが上昇しましたが、休みを言いだせず、30週まで当直、33週まで外来や講義を担当し、34週で退職になりました。①院内保育所②土日の日直は行うが当直免除③夫の両親のサポートのおかげで、④理解ある上司に恵まれ復帰しました。しかし復帰するタイミングを逃したり、心身ともに疲弊して辞めてしまったりした育児中の女性医師が地方のいたるところにいます。

まず保育所ですが、地方でも保育園は不足し、私の第2子も待機児童です。一方、少子化で幼稚園希望者は減少しています。保育所確保のため、附属幼稚園がある国公立大学は幼稚園を保育園にし、年中、年長児のクラスには幼稚園過程の学生実習を受け入れることを提案します。附属保育園の運営は教育学部で行い、得た利益は教育学部の財源にする他、院内保育園併設の附属病院には助成金を支給することで保育所が増えれば、女性医師の離職が減るかも知れません。

次に国公立病院で当直明けの勤務を原則禁止し、勤務医の医療ミス、過労死を減少させるとともに、十分な当直手当による"当直する医師"と"当直しない医師"に金銭的な"差"を作ることを提言します。医師間の不公平感は減少すると考えられます。

日勤帯の勤務医の雇用が生まれ、夜勤が無理な女性医師も離職せずに済むかもしれません。また住民の皆様が近くに"無床の診療所"より"病院"を希望する気持ちもわかりますが、人口減少に伴う病院再編もなかなかすすまず、大学病院でも医師不足であり、公立病院では自治体が手当を負担することにより、病院再編がすすむかもしれません。

地方の医師不足に対し、平均寿命の長い女性の医師の離職を防ぐことは有効であり、"ママさん"医師がやめずに継続し、人数が増えれば、その中からきっとキャリアを積む女性医師も出てきます。まずは保育所の整備、国公立病院で当直明けの勤務を原則禁止し、勤務医"当直する医師"に十分な手当てを提言します。

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