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1992.05.23 
第12回 平成3年度受賞 高原 照美  

「日本女医会研究助成を受けて」

富山大学医学部第三内科准教授
高原照美

初めての英語論文から女医会研究助成まで

 私は平成3年に第12回日本女医会学術研究助成をいただいた。研究タイトルは「肝線維化過程における細胞外基質の分解系の動態とその調節」である。当時の研究を思い出しながら過去の軌跡をたどってみたい。
 卒業後7年目に大学院に入学して初めて研究の世界に飛び込んだ。研究内容は肝線維化機序を免疫電子顕微鏡で解析するもので、この業績で博士号を頂いた。初めての英語論文が筆頭著者としてLab Invest(Laboratory Investigation)に掲載された感激は今でも忘れられない。大学院を卒業して臨床に戻ったが、その後研究を継続したくて米国トーマスジェファーソン大学に1年間留学させていただいた。米国では分子生物学が花盛りで、遺伝子発現をノーザン法やin situ hybridization法で証明する事を学んだだけでなく、異文化に触れ世界中の研究者と切磋琢磨する中で社会に目を開くきっかけになった。留学は私と家族にとってかけがえのない貴重な人生経験であった。
 日本女医会研究助成を応募したのは、ちょうどアメリカから帰国直後である。研究をさらに日本でも発展させたいと意欲に燃えていたが、いかんせん、先立つ研究費がなくて困っていた頃である。たまたま通りかかった大学事務局の前に掲示されていた「日本女医会学術研究助成募集」がふと目にとまり、わらをも掴む思いで早速応募させていただいた次第である。これが研究助成金をいただいた最初であった。当時は私自身も若かったということもあるが、医学部全体が臨床、教育、研究、とバランスよく遂行できた時代で、研究のアイデアと意欲があればどんどん発展できた。研究資金のあてのない私にとって研究助成は大きな励ましになったことを思い出す。
 頂いた助成金で、核酸を膜に転写する転写装置を購入した。おかげでその機器を用いてたくさんの論文を出すことができ、また後輩を指導できたことに感謝している。わずかな金額でもこのような支援があると、研究継続の大きなモチベーションになり、大変ありがたい事業であると感謝しつつ、ぜひ若い先生方にもこの制度を利用してもらえたら、と思っている。

手を動かして解明する研究マインドと、臨床に還元する目標を

 研究人生はつねに順風満帆というわけではないが、その後は文部科学省の科学研究費なども取得し、肝線維化の機序の解明を発展させながら、肝再生療法の開発、生活習慣病から発生する脂肪性肝炎の機序の解明や治療法の研究、骨髄細胞を用いた肝再生療法など、仕事の幅を広げてきた。平成17年には吉岡弥生賞までいただく名誉にも浴した。
 研究に対してはいろんな考え方があると思う。私のように大学病院勤務であれば臨床をするかたわら片手間に研究をし、大学院生を指導する、ということにならざるを得ない。基礎研究者のように最先端の研究をすることは到底望めない。常日頃心がけている事は、日常診療の忙しさに埋没せず少しでも疑問点を見つけたら手を動かして解明する研究マインドを失わない事である。またいったん研究に取り組んだら、次々生まれる疑問点をさらに解明したいというモチベーションの維持を大切にしている。ライフワークであるテーマを持ちそれを継続できる事が最も理想的であるが、必ずしもすべての人がそれを全うできるわけではない。しかし研究は一度面倒くさい、と思ったらなかなか再開できない。大学院生や若い先生方とともに論文を読み、手を動かすことを少しでも継続することを心がけている。決してあきらめずに努力しがんばり抜くこと、継続すること、そして臨床に還元する目標を持って研究を継続したいと思っている。
 最後に研究を志す若い先生方へメッセージを送ります。医学の中でも研究の世界は男女の差別は少ない。成果をだせば正当に評価される世界である。実際にはそうではない事も多いが、ほかの分野に比べればまだましな世界である。何かをやりとげ、形になるものを作りだすこと、そして苦労があるからこそ得られる達成感をぜひ味わっていただきたい。ぜひ女性医師が研究の分野でもっともっと活躍できる時代が来ることを願っている。


キーワード 分子生物学 研究者支援 研究マインド 若手女性医師へのメッセージ


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