「日本女医会学術研究助成を授与された後について」
留学中のMBA取得。研究にも広がりが
第40回日本女医会総会で「糖質ステロイドホルモンによるインスリン抵抗性の出現機序解明について-プロテインキナーゼC(PKC)を中心に-」の研究課題に学術研究助成を授与いただきました。私は母校の岐阜大学第三内科(現・内分泌代謝病態学分野)に入局、臨床研修の後、インスリン抵抗性機序解明の研究テーマを与えられていた時でした。教室の初代教授三浦清先生(現・名誉教授)、第2代教授安田圭吾先生(現・名誉教授)の理念とされたのが"臨床に根ざした基礎研究"であり、臨床で経験する内分泌疾患の耐糖能異常の解明につながるテーマでした。
ちょうど、石塚達夫先生(現・岐阜大学大学院医学系研究科総合診療内科学教授)が、インスリン情報伝達機構解明で高名なFarese先生(南フロリダ大学医学部内科教授)の研究室留学から帰国されたばかりで、糖尿病ラットの作製、脂肪細胞や筋肉組織の糖取り込み実験、PKCアッセイ、ウェスタンブロット・・・と、様々な生化学実験の基礎を叩き込んでいただき、後に留学する際の大きな自信となりました。そして学術研究助成の成果として"ステロイドホルモンはインスリン標的細胞の細胞内情報伝達機構におけるPKC分子種を活性化するため、インスリンによるPKC分子種の活性化を変化させてしまいインスリン抵抗性を誘発する"ことを明らかにし、学位の仕事として認めていただきました(Metabolism 46:997-1002,1997)。
その後、Farese先生の教室から独立したCooper先生の教室へ1995年に留学しました。留学後はインスリン標的細胞だけでなく血管平滑筋細胞や乳癌細胞など多くの細胞を使用して"糖尿病の発症原因を追求する"研究から、高血糖や高インスリン血症による"糖尿病合併症"の研究へと広がりが出ました。Cooper先生は、女性研究者で2人のお子さんがおられましたが、NIHの予算を堅実に獲得し、安定して論文掲載をしていました。さすがに米国は男女共同参画の進んだ国かと思ったものの、Cooper先生によればとんでもない、米国にももちろん女性研究者のハンディーキャップは存在するのだと、苦労を切々と語ってくれました。Cooper先生は、私のキャリア形成にも理解があり、「臨床医として発展するためには、マネージメント能力も必要だろう」と南フロリダ大学の"臨床医のための経営学修士(MBA)"への進学も勧めてくれました。安田先生のお許しもいただいて、TOFLEとGREを受けて入学したものの、その膨大な勉強量に苦労しました。しかし、米国での修士大学院を卒業できたこと、医療における経営理論を学問として学べたことは自信となり、その後の仕事の様々な局面で役立つこととなりました。
1998年に帰国した後、外来医長や病棟医長を仰せつかりましたが、孤独な決断をせねばならぬ場面で、MBAで学んだ"組織の経営""医療の質"などの論理的根拠が自らを助けてくれました。
女性医師のキャリアアップにプラスに影響する人間関係
帰国後、同期入局の女性医師奥村三恵先生が研究の立ち上げを手伝ってくれました。「脂肪細胞から分泌されるレプチンは乳癌細胞の増殖を促進する」ことを示し、奥村先生の学位論文として完成させることができました(Biochim Biophys Acta 1592:107-116,2002)。子育てとの両立で学位の仕事の開始が同期入局者より少し遅れていた奥村先生に、学位の仕事を完成させてもらうことができて、少しばかりの恩返しとなったのは本当に良かったと思いました。女性医師のキャリアアップには女性同士の友情も大事だと示した一例と思っています。
2003年に第3代教授武田純先生が就任され、「岐阜市における糖尿病疫学実態調査」をさせていただいております。武田教授の御推挙により、本学保健管理センター教授のポジションに就任いたしました。文科省の学生支援GPにより、大学生の生涯健康を推進する研究をすすめております。今、いろいろチャレンジさせていただいておりますのも、日本女医会の学術研究助成応募にチャレンジしたことから始まっています。「応募してみたら」と勧めて下さったのは安田先生ですが、安田先生は女医会理事の山本蒔子先生とご同級、ご同門の間柄と伺っています。バリバリと仕事をなさっている大先輩の存在が、前教授の判断に影響したと私は勝手に確信しております。
私も、後輩女性医師たちにプラスに影響するような先輩女性医師でありたいと願ってはいますが、今だ、至らずというところです。今後、学術研究助成に応募する女性医師の何かしらの役に立つよう、日々精進していかねばと気持ちを新たにしているところです。
キーワード:留学 経営学修士(MBA) 大学生の生涯健康教育