臨床(100%)から→研究(100)→研究(90)と臨床(10)→教育(80)と研究(20)まで
帰国から日本女医会助成金受賞の研究まで
膵臓の機能調節について知識を得たいという希望をかなえたくて、3年間米国で基礎研究をおこなった。1982年、母校(東京医科歯科大)にも関連病院にも籍はなかったので、帰国後の就職を考えねばならなくなり、学会誌に印刷された抄録を見て、実験の手法が似ているという理由で、別冊(PNASやAJPなど数編あった)を同封して、東京都老人総合研究所の当時の研究室長である木谷健一先生に、履歴書をアメリカから郵送した。木谷先生とは、面識も何もなかったが、あたってくだけろ!の心境であった。少々変人?の木谷先生は「PhDよりMDは転職しやすいので、気に入らなければやめさせられるから」という理由で私を採用してくれた。
木谷先生の研究テーマは胆汁(酸)分泌調節であり、胆道系と膵臓とは、解剖学的には非常に近い位置にあるものの、内容的にはかなりちがう。「オレは膵臓のことはわからん、口も手もださない、勝手にやっていいから、成果を出せ」といわれた。
覚醒ラットの膵外分泌調節には、上部小腸内のプロテアーゼ(トリプシン、キモトリプシンなど)が通常の10%未満に減少すると、膵外分泌が増加する、という特徴がある(luminal feedback regulation)(1)。腸管内プロテアーゼが減少すると、消化管ホルモンの一つであるコレシストキニン(CCK)が小腸から血中に分泌され、膵外分泌が増加する。CCKを分泌させる物質が小腸内に存在することを想定し、精製を行った(2)。
日本女医会の研究助成金はこのテーマ「慢性膵炎ことに膵機能不全の内科的治療に関する実験的研究」に関して支給された。民間(財団)からの研究助成としては、上原財団につぐ2件目の受賞で、自分の自由になる研究費を自力で稼ぐことができたというのは、ひとつの自信になった。
老人研でのプロジェクト研究、多くの新知見と収穫へ
「学会発表は業績ではない、英語の論文しか業績としては認めない」というのが木谷先生の持論であった。幸い、私の行っている実験システムが珍しかったこと、消化管ホルモンの測定や製造が得意な共同研究者を、所外にえることができたことから、平均すると年間10編程度、英語の論文が受理されてきた。
1993年、木谷先生が東大へ異動され、私は研究室長(管理職)に昇進した。同じ部署で持ち上がりというケースは、はじめてだったらしい。1994年、CCK投与によっても膵外分泌が増加しないラットを発見し、血中CCK値は正常であったことからCCK-A受容体(AR)の異常を想定した(3)。 このラットは肥満を伴い糖尿病を自然発症する。そこで、CCK-AR遺伝子変異と肥満、糖尿病の関係を調べる目的で、研究所内の短期プロジェクト研究に応募し、3年2クール(1996〜2001年)研究を行った。これは、所内の研究員と所外の研究協力者、計10名余で行う班研究のようなもので、ラット、マウス、ヒトのCCK-AR遺伝子クローニング、ヒト遺伝子多型[プロモーター領域の2ケ所の塩基置換(A-81G, G-128T)]の発見(4)と疾患との関わり、CCK-ARノックアウト(KO)マウスの作成(5)、CCK-ARBR double KOマウスの作成など、多くの新知見と収穫をえた。
大変ではあったが、研究者同士の仲間意識のようなものも芽生え、充実した非常に楽しい6年間であった。平行して、この時期には、厚生科学、文科省科研費、民間からの研究助成金なども継続してえることができ、研究が楽しくて面白くて、幸せな時であったと思う。
老人研が設立されて30年以上が経過し、都財政の逼迫、医療行政の変換に伴い、4つあった都の医学系研究所も改組が続き、老人研も2009年4月から名称が変更された。私自身は縁があって、2008年4月に現職場に異動したが、老人研から歩いて20分ほどの距離にあることから、研究員のみなさんにはゲストスピーカーとして、講義にきてもらったり、KOマウスの飼育の手伝いをしにきてもらったりと、多いに助けられている。アラカン(アラウンド還暦)の年齢になると、実験しようにも、よく見えない。この大学は、博士課程まで存在するのだが、どのくらいの学生が実験や研究に興味を持ってくれるのか、今のところまだ未知数である。
キーワード コレシストキニン、ノックアウトマウス、膵臓、肥満
1.Miyasaka K. and Green G. The effect of partial exclusion of pancreatic juice on rat basal pancreatic secretion. Gastroenterology 86: 114-119, l984.
2.Miyasaka K, Guan D, Liddle A, and Green GM. Feedback regulation by trypsin: Evidence for intraluminal CCK-releasing peptide. Am. J. Physiol.257: G175-181,1989.
3.Miyasaka K, Kanai S, Ohta M, Kawanami T, Kono A, Funakoshi A. Lack of satiety effect of cholecystokinin (CCK) in a new rat model not expressing the CCK-A receptor gene. Neurosci Lett 180: 143-146, 1994.
4.Funakoshi A, Miyasaka K, Yamamori S, Takata Y, Kataoka K, Takiguchi S, Kono A, Shimokata H. Body fat content is related to cholecystokinin A receptor gene promotor polymorphism. FEBS Lett 466: 264-266, 2000.
5.Shimazoe T, Morita M, Ogiwara S, Kojiya T, Goto J, Kamakura M, Moriya T, Takiguchi S, Kono A, Miyasaka K, Funakoshi A, Ikeda M. Cholecysoktinin-A receptors on retinal amacrine cells play a role in circadian photo-entrainment. The FASEB Journal article fj.07-9372com. Published online December 11, 2007.