「日本女医会の研究助成をいただいて」
受賞に支えられた研究とその後の発展
私は、痙攣重積発作後の神経細胞傷害におけるプロスタグランジンE2(PGE2)の作用に関する研究で、平成15年度の日本女医会の学術研究助成を頂いた。それから5年を過ぎたが、当時、自由に使用できる研究費と温かい励ましのお言葉を頂戴して、研究意欲がさらに上昇したことを覚えている。研究は失敗や挫折の連続であり、なかなかスムーズに進まないことも多いが、その時期は研究者にとって最も大切な期間である。そして、このような苦しい時こそ、周囲からの応援は大きな支えとなる。日本女医会の先生方のご支援には、心から感謝している。
その後、同テーマで研究を続け平成18年に「痙攣後遅発性に誘導されるnon-neuronalなシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)から産生されるPGE2が脳内海馬神経細胞傷害を増強する」ことを見出し1)、平成19年には「興奮性脳疾患におけるPGE2合成系の役割」について総説論文を発表した2)。さらに最近、「神経細胞傷害を悪化させるPGE2は、血管内皮細胞で誘導される膜結合型PGE合成酵素(mPGES-1)とCOX-2から作られ、アストロサイトのendfootにおけるPGE2レセプターサブタイプであるEP3の発現を強化する」ことがわかった3)。現在は、神経細胞傷害過程における血管内皮細胞、アストロサイト、ニューロン間の制御機構や記憶障害・多発性硬化症における炎症性因子の関与を調べつつ、記憶学習における細胞接着分子の役割や神経学的発達障害のメカニズムに関する共同研究も順次進めている。
また、平成18年には現職の総合研究所研究部の講師を拝命した。この際に、支援して下さった学内外の諸先生方には深く感謝している。現在は、所長の高桑雄一先生や総研スタッフに支えられて、これまでの研究を発展させながら、学生教育や学内外の女性医師の支援活動にも携わっている。
研究への思いを大切に、ためらわずチャレンジを
一方、私が所属する女子医大の総研には共同利用施設があり、学内の人が自由に研究を行うことができるように機器を整備しているが、研究支援として、特に若手研究者支援、大学院生支援に力を入れている。さらに、総研研究部は、学内・学外ともに共同研究を積極的に行っており、手続きは必要であるが、学外の人が総研で一緒に共同研究を行うことも可能である。このような設備やシステムを積極的に活用して、是非皆さまの研究を発展させて頂きたい。
最後に、20~30歳代の医師には、「研究をやりたい、やってみたい」と思う気持ちを大切にされることをお伝えしたい。私が基礎研究を始めたのは31歳で子供が3歳の時だった。決して早いスタートではなかったが、何かを始めるのに遅すぎるということはないと思う。新しいことを始める場合、たしかに最初の一歩を踏み出すのには少し勇気が必要かもしれないが、その一歩を踏み出さない限り何も始まらない。現在活躍されている先生方にも、絶対に最初の一歩はあったのである。まずは、ためらわずにチャレンジすることを勧める。研究は自らの手と頭で進む厳しい世界ではあるが、その魅力はとてつもなく大きい。今後、研究志向の医師が増えることを心より願っている。
1) Takemiya T, Maehara M, Matsumura K, Yasuda S, Sugiura H, Yamagata K. Prostaglandin E2 produced by late induced COX-2 stimulates hippocampal neuron loss after seizure in the CA3 region. Neurosci. Res 2006; 56(1):103-10
2) Takemiya T, Matsumura K, Yamagata K. Roles of prostaglandin synthesis in excitotoxic brain diseases. Neurochem Int. 2007; 51(2-4):112-20.
3) Takako Takemiya, Kiyoshi Matsumura, Hiroko Sugiura, Michiyo Maehara, Shin Yasuda, Satoshi Uematsu, Shizuo Akira, Kanato Yamagata. Endothelial microsomal prostaglandin E synthase-1 exacerbates neuronal loss induced by kainate. J Neurosci. Res. 2009; in press.
キーワード:プロスタグランジンE2(PGE2)、膜結合型PGE合成酵素(mPGES-1)、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)、血管内皮細胞、痙攣重積発作、神経細胞傷害