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1992.05.23 
第12回 平成3年度受賞 内潟 安子  

「日本女医会学術研究助成」をスプリングボードに

東京女子医科大学糖尿病センター
教授 内潟 安子

私は平成3年に日本女医会学術研究助成を受賞した6人のうちのひとりである。医学部を卒業後、臨床研修とともに研究を続けてきた者のひとりとして、研究助成をいただくことがいかに研究推進の励みになるかを、ここに記したい。

◆なにか物足りなさを感じたら

医学部を卒業後、通常は多くの時間を臨床研修に費やす。こまねずみのように、毎日働いているという方もいるだろう。新しい臨床研修制度ができる前の、我々の若かりし時代も、今とそんなに違いはない。毎日、病棟業務と外来の下っ端業務に追われて、慢性の睡眠不足だった。
しかし、上記の業務の毎日が同じことの繰り返しではないかと感じてすこし失望したとき、なにかわくわくとした気持ちで新しいことにチャレンジしたい、という気持ちがきっとでてくるはずだ。医師、医者としてなにか自分がした、というモノを手にしたい、この気持ちが研究へと向かわせる。

◆大したことのない研究でも未知との遭遇

私は臨床の医局で研究のてほどきを受け、学位を取得した。さらに基礎の研究室にて、研究のノウハウを一から再度教わった。試験管、メスシリンダー、フラスコの使い方、取り扱い方、目的とするタンパクの抽出の仕方、などなどである。
学位取得の研究は、研究生活の第一歩といえる。自分でアイデアを企画し、最初から最後まで実施計画を立てたわけではない。上司の先生にてほどきを受けて、やっとできたという場合がほとんどであろう。
しかし、未知と遭遇したという体験はしっかりと心に残っているはずだ。

◆助成金をいただくこと

未知との遭遇を自分の力で! 自分の力で、わからないコトを明らかにしたい。これは、臨床の場でも同じことをおこなっているので、容易に理解できるはずだ。
しかしながら、自分でこれからの研究の方向性や予備実験して手ごたえを感じて、アイデアを企画したりするには、当然費用が要る。自分で家計をきりもりすることと同じである。
たいていの場合、予算が教室の研究費からまかなわれることは困難を要する。うまくいくかどうかわからない研究に多くの費用がいるといった場合、なかなかむずかしいものがある。もちろん自分でも不安だ。うまくいくともいえないからだ。
日本女医会学術研究助成は、公的機関の研究助成と異なり、このような女性医師に特化して研究をサポートしている。
平成3年に受賞したが、このときの研究テーマは「インスリン自己免疫症候群を分子生物学的に解明する」というものだった。
初代東京女子医科大学糖尿病センター所長平田幸正名誉教授が1970年に世界に先駆けて発見したインスリン自己免疫症候群という疾患概念がある。日本人の自発性低血糖症の原因疾患の第3位に位置する。インスリン注射歴もない人が突然に低血糖症をおこす疾患で、奇妙な疾患と思われていた。どうも特異的HLA型がありそう、甲状腺疾患とも関係あるのでは?と考えられていたのであるが、決定的な証拠がなかった。
実験する習慣とか時間の使い方などを習得しておくと、すばらしい研究対象にぶつかるのかもしれない。インスリン自己免疫症候群を発症する患者の特異的HLA型を発見することができ(HLAと強く相関する疾患として世界で5番目)た。
研究助成はさらに弾みをつけてくれた。このHLA型をもつバセドー病患者がチアマゾールを服用するとかならず発症していることも突き止めた。
研究助成を受賞したということは、自分の研究を世の中に認めてもらったという証しでもある。実験のための実験ではない、という証しともいえよう。

1. Uchigata Y, Kuwata S, Tokunaga K et al. Strong association of insulin autoimmune syndrome with HLA-DR4. Lancet 339:393-394, 1992.
2. Uchigata Y, Omori Y, Nieda M, et al. HLA-DR4 genotype and insulin-processing in insulin autoimmune syndrome. Lancet 340:1467,

1992.
3. Uchigata Y, Hirata Y, Omori Y. A nobel concept of type VII hypersensitivity induced by insulin autoimmune syndrome (Hirata's disease). Autoimmunity 20:207-208, 1995.
4. Uchigata Y, Hirata Y. Insulin autoimmune syndrome (IAS, Hirata Disease) Molecular Mechanisms of Endocrine and Organ Specific Autoimmunity (LANDES Company) (Eisenbarth GS ed.) 2002, and in press 2009

キーワード:低血糖症、インスリン自己免疫症候群、HLA


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